経カテーテル的PFO閉鎖術

卵円孔開存(Patent Foramen Oval, PFO)とは?

胎児期には自分で呼吸ができないので、母体から酸素や栄養を受け取り生きています。そのため、胎児期は、血液の流れる経路が出生後と異なります。これには、右心房と左心房の間の壁(心房中隔)に存在する卵円孔と呼ばれる小さな隙間が重要な役割を果たします。
卵円孔は多くの場合出生後に閉鎖しますが、4人に1人程度は閉鎖せずに残ります。この状態を、「卵円孔開存(Patent Foramen Oval, PFO)」と言います。



PFOを有している方の多くは無症状です。一方で、足の静脈にできた血栓が右心房に流れ、卵円孔を介して左心房から動脈系へと到達した結果、脳梗塞の原因となることがあります。



脳梗塞を生じると、以下のような症状を引き起こすことがあります。


  • 突然の片側の麻痺
  • 言語障害
  • 視覚障害
  • めまい

経カテーテル的PFO閉鎖術とは?

PFOが原因で生じる脳梗塞の予防として、カテーテルを用いて500円玉ほどの大きさの特殊な器具を用いて、PFOを閉鎖することができます。
体への負担が少なく、通常4日程度で退院できます。
この治療によって、脳梗塞の再発リスクを低下させることが期待されます。

経カテーテル的PFO閉鎖術のメリット

抗血栓薬を減量できる

抗凝固療法に依存することなく血栓リスクを低減できるため、抗血栓薬の減量が可能になります。

患者様の身体への負担が少ない

開胸の必要がないため、体への負担が軽減されます。

術後の社会復帰が早い

順調に経過すれば、数日で退院が可能です(ただし、病状や体調により入院期間が延長される場合もあります)。

傷が小さい

足の付け根からカテーテルを挿入するため、1cm未満の目立たない傷で治療が行えます。

脳梗塞リスクを低減できる

抗血栓薬のみの治療と比較し、脳梗塞リスクを低減させます。

治療の流れ

当院での経皮的卵円孔閉鎖術は、以下の流れで行います。

全身麻酔下で行われ、所要時間は約1時間です。



1

太ももの静脈からカテーテルを挿入します。

2

経食道心エコーでの観察下に、心臓の中の卵円孔(PFO)にカテーテルを通過させます。

3

閉鎖デバイスをカテーテルから持ち込み、卵円孔を挟むように留置し、位置確認などを行い終了します。

4

術後の検査を実施し、4日間程度で退院となります。

治療の対象となる方

原因不明の脳梗塞を発症し、検査でPFOが確認された方で、再発予防を目的として医師が閉鎖を推奨する場合に適応となります。

※すべてのPFOに治療が必要なわけではありません。適切な検査・診断を通じてご提案いたします。

よくある質問

費用はどのくらいかかりますか?

経カテーテル的PFO閉鎖術は健康保険の適用対象であり、高額療養費制度の利用により自己負担額を減らすことが可能です。


高額療養費制度とは?

1か月に支払った医療費が高額になった場合、定められた上限額を超えた金額が払い戻される制度です。上限額は、個人や世帯の所得に応じて決まります。詳しくは、加入されている公的医療保険組合や厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。


高額療養費制度を利用される皆さまへ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

※入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。

どのような合併症がありますか?

経カテーテル的PFO閉鎖術は医療行為であるため、いくつかの合併症リスクが伴います。リスクを最小限に抑えるよう努めておりますが、以下の合併症についてご理解ください。


1. 出血(発生率: 1~5%)

カテーテルを挿入した部位の出血や、心臓周囲の出血が起こりえます。出血量が多い場合、追加の処置や輸血を必要とする場合があります。


2. 感染(発生率: 1%未満)

手術部位やカテーテル挿入部位で感染が生じ、抗生剤加療やデバイスの摘出が必要となる場合があります。


3. 血栓形成(発生率: 1%未満)

デバイスの周囲で血栓が形成される可能性があり、その血栓によって塞栓症を発症することがあります。この場合、抗血栓療法を強化する必要性があります。


4. デバイスの位置ずれ(発生率: 約1%未満)

術後にデバイスが適切な留置位置からずれてしまうことがあります。この場合、デバイスの摘出が必要となることがあります。


5. 心タンポナーデ(発生率: 約1%未満)

心臓周囲に血液が溜まり、心臓が圧迫され機能が低下することがあります。この場合は追加の処置、手術が必要となることがあります。


6. アレルギー反応(発生率: 約1%)

デバイスの材料や造影剤対してアレルギー反応が出る場合があります。これには発疹やかゆみなどの症状が含まれます。


7. 心房細動(発生率: 1%程度)


8. 一過性脳虚血発作(発生率: 1%程度)


当院のリスク管理とサポート体制

当院では、合併症のリスクを最小限に抑えるために事前の精密検査を実施し、患者様に適切なアプローチで治療を提供いたします。また、万が一の合併症に備え、迅速な対応ができる体制を整えています。手術後も丁寧なフォローアップを行いますので、ご安心ください。

治療による痛みはどの程度ですか?

手術中に苦痛を感じることがないよう、全身麻酔下で治療を行います。術後にはカテーテル挿入部の疼痛や全身麻酔に伴う喉の違和感が残ることがありますが、多くは数日で治まります。

治療後にMRI検査は受けることができますか?

留置直後からMRI検査を受けることが可能です。

治療後に抗血栓薬(血をサラサラにする薬)は必要ですか?

治療後は一時的に抗血栓療法を強化する必要性がありますが、段階的に減量し、最終的に治療前よりも出血リスクの低い抗血栓療法を目指します。