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腎盂がん・尿管がん・膀胱がん

腎盂がん・尿管がん・膀胱がんについて

腎実質でつくられた尿は中央部の腎盂に流れ込み、尿管という管を経由して膀胱に注ぎ込みます。この腎盂に出来るがんが腎盂がん、尿管に出来るがんが尿管がん、膀胱に出来るがんが膀胱がんです。腎盂から尿管、膀胱、尿道の一連の尿路の内側は尿路上皮という粘膜細胞で覆われていて、これらの尿路上皮から発生したがんは多発したり繰り返し再発したりするという共通した特徴があります。
腎盂がん・尿管がん・膀胱がんの初期には無症状のことが多く、健康診断やほかの病気の検査中に偶然見つかることがあります。また、がんで尿管が塞がったときに腎臓に尿がたまって水腎症をおこすことがありますが、多くの場合は片方のみの閉塞ですので尿が出なくなったり体がむくんだりすることは多くありません。がんがさらに大きくなると尿に血が混じったり(血尿)痛みが出たりします。



担当する医師

検査について

1. 尿検査

尿のなかに血が混じっていないか(検尿・尿沈渣)、特殊な染色をしてがん細胞が混じっていないか(尿細胞診)確認します。
腎盂がん・尿管がん・膀胱がんには血液で調べる有効な腫瘍マーカーはありません。



2. 膀胱鏡検査

膀胱がんが疑われる場合に尿道から内視鏡を入れて腫瘍の位置・数・大きさなどを観察します。内視鏡検査はゼリー麻酔による局所麻酔で行いますが診断、治療方針を決定するために大切な検査です。



軟性膀胱鏡

軟性膀胱鏡




3. 画像検査:超音波検査(エコー検査)、造影CT、MRI

超音波検査では腎・尿管・膀胱にがんを疑う腫瘤や腫れがあるかを観察します。
腎盂がん・尿管がんの疑いが強い場合、造影CTを行ってがんの深さや拡がり具合転移の有無などを確認します。
MRIは膀胱がんの根の深さや周囲臓器への浸潤を調べるときにおこないます。



4. 腎盂・尿管カテーテル検査(腎盂がん、尿管がん)

腎機能が悪かったりアレルギーがあったりして造影CTが行えない場合あるいは撮影した画像の映り方がはっきりしない場合、膀胱鏡から細いカテーテルを挿入して造影剤を流し直接腎盂・尿管を映し出す検査をおこないます。その際、尿をそこから直接採取し細胞診を行います。



5. 尿管鏡検査(腎盂がん、尿管がん)

これらの検査でもはっきり診断がつかない場合、麻酔をかけたうえで細い内視鏡(尿管鏡)を挿入して観察し、さらに組織を採取して病理検査をおこない確定します。

手術について

1. 手術

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)

腰椎麻酔または全身麻酔をかけたうえで尿道から内視鏡を挿入し、モニターでみながら腫瘍を電気メスで切除する手術です。治療と診断を兼ねた手術で、腫瘍の根が深い・悪性度が高い・数が多いなどの場合あとで追加のTUR-BTや再発予防目的の膀胱内薬物注入(抗がん剤やBCG液)をおこなうことがあります。
副作用として血尿、尿路感染症、排尿時痛などがあります。




膀胱全摘・尿路変向術

がんの根が深くて内視鏡で取りきることが出来ない場合、膀胱がん細胞を取り除くために膀胱をすべて摘除する膀胱全摘術が標準治療です。膀胱を摘除したあとは引き続き尿路変向(尿管皮膚瘻、回腸導管など)をおこない、尿を体の外に出す経路を作成します。当科ではおなかにあけた小さな穴から内視鏡を挿入しておこなう腹腔鏡下手術でおこなっています。
副作用として出血、創部感染、腸管を使った尿路変向の場合一時的なイレウスなどがあります。



腎尿管全摘術

がんのある側の腎臓と尿管を一緒に摘出します。高リスクの場合にはリンパ節郭清をすることもあります。当科では腹腔鏡下手術のほか、最近ではロボット支援下手術もおこなっています。




2. 薬物療法

手術前後に再発を予防するため、あるいは転移があって手術でとりきることが難しい場合、手術をした後に再発・転移した場合などに薬物療法を行います。薬物療法には抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤、抗体薬剤複合体といった種類があります。



当科で施行している薬剤・療法

  1. 抗がん剤:ゲムシタビン・シスプラチン療法(GC療法)、ゲムシタビン・カルボプラチン療法(GCa療法)
  2. 免疫チェックポイント阻害剤:ペンブロリズマブ、アベルマブ
  3. 抗体薬剤複合体:エンホルツマブベドチン
    副作用として嘔気・食欲不振・倦怠感・骨髄抑制・脱毛・皮膚障害などがあります


3. 緩和的放射線治療

放射線治療は腎盂がんや尿管がん、膀胱がんでは標準治療ではありませんが、血尿などの症状をしばらく抑えておくため・骨転移などがある場合に痛みを和らげるためなどにおこなうことがあります。

診療実績

腎盂がん・尿管がん手術症例数 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
腹腔鏡下腎尿官全摘術 5 8 10 4 3 3


膀胱がん手術症例数 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT) 55 51 65 51 64 78
腹腔鏡下膀胱全摘術 - - - - - 2

がん登録件数