0774-20-1111

の画像

食道がん

食道がんについて

食道がんは、食道(口から胃に食物を運ぶ管状の器官)の粘膜から発生する悪性腫瘍です。食道の粘膜内にとどまるがんを早期食道がんと言いますが、この時期には自覚症状はほとんどありません。がんが進行すると、飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状が現れます。
食道がんには、主に扁平上皮癌と腺癌の2つのタイプがあります。扁平上皮癌は食道本来の粘膜である扁平上皮から発生するもので、日本では約90%を占めています。危険因子は主に飲酒と喫煙です。一方、腺癌は逆流性食道炎を背景として生じることが多く、欧米では食道がんの半数以上を占めています。危険因子は肥満や喫煙、欧米型の食生活などがあります。
食道がんは転移しやすく、早期のがんでもリンパ節転移をきたしやすいと言われています。そのため、早期発見が重要です。早期発見には、検診や人間ドックでの内視鏡検査や上部消化管造影検査(バリウム食道透視)が有効です。



担当する医師

手術について

ステージ0の治療

粘膜内にがんが留まっている場合、食道を温存できる内視鏡的切除が標準的な治療法として推奨されています。しかし、病変が5cm以上と広範囲であり、内視鏡的切除後に食道が狭窄するリスクが高い場合、手術や化学放射線治療を行うことがあります。化学放射線治療とは、放射線治療と化学療法を組み合わせた治療法であり、特定のがんの種類では標準治療として推奨されています。また、手術後にがんが再発した場合にも、化学放射線治療が考慮されることがあります。



1.内視鏡治療

上部消化管内視鏡を使用した食道がんの切除方法は、体への負担が少なく、回復が早いのが特徴です。この治療法には、内視鏡スコープの先端に透明キャップを装着し、がんの病巣を吸引または鉗子で掴み、スネアで絞扼して切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)や、電気ナイフで病巣を削り取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。対象となるのはリンパ節転移のないステージ0の早期食道がんの患者で、治療後には切除した組織を顕微鏡で調べ、がんが残っているかリンパ節転移の可能性が高いと判断された場合には追加の治療法が施されます。合併症としては出血や穿孔、狭窄があるものの、多くは内視鏡を用いて対処可能です。



内視鏡的粘膜切除術(EMR, strip biopsy)



内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)



2.外科手術

食道がんの治療は、進行度に応じて異なりますが、主に、内視鏡による切除、外科手術、放射線治療、抗癌剤を用いた化学療法などがあります。当院では、外科手術が必要な患者さんは、京都大学消化管外科と連携して治療にあたっています。

薬物療法・放射線療法について

食道ESD後の化学放射線療法(CRT)について

本邦の食道がんの90%は扁平上皮癌で、早期発見が可能です。Ⅰ期の食道がんに対しては内視鏡的粘膜切除術(ER)が適応されますが、粘膜下層浸潤癌やリンパ管・静脈浸潤が認められる場合にはリンパ節転移のリスクが高まり、外科的切除や化学放射線療法(CRT)が必要です。ただし、外科的切除は高侵襲的で合併症も懸念される一方で、CRTには局所制御の課題があります。そのため、食道表在癌の治療には内視鏡切除を行うことが推奨され、病理診断をもとにリンパ節転移リスクを評価し、経過観察やCRTの追加を柔軟に決定するアプローチが有望とされています。これにより、臓器を温存しつつ患者ごとに最適な治療が実現できる可能性が示されています。

診療実績

内科領域診療実績

2020 2021 2022 2023 2024
上部内視鏡検査 6,607 7,084 7,027 7,283 8,088
下部内視鏡検査 2,701 2,604 2,578 2,892 3,056
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、粘膜切除術(EMR) 828 883 915 1,062 1,202
ポリペクトミー(上部・下部) 382 624 727 861 941
EMR(上部) 0 3 1 7 6
EMR(下部) 446 256 187 194 255
内視鏡的消化管早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術(ESD) 93 111 115 120 120
食道 8 15 13 7 9
38 43 46 53 63
十二指腸 1 1 2 5 2
大腸 46 52 54 55 46
経口内視鏡的筋層切開術(POEM) 0 0 3 0 0
腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS) 4 4 1 0 0
内視鏡的消化管止血術 106 173 215 164 195
上部 74 119 147 82 128
下部 32 54 68 82 67
内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL) 24 27 27 16 24
内視鏡的食道・胃静脈瘤硬化療法(EIS) 6 6 1 2 0
内視鏡的消化管バルーン拡張術(EBD) 41 48 33 38 33
内視鏡的消化管異物除去術 20 29 25 28 34
内視鏡的消化管ステント留置術 26 22 24 50 40
食道 5 4 0 5 3
胃・十二指腸 2 5 4 11 12
大腸 19 13 20 34 25
胃瘻関連処置 80 79 86 108 91
経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG造設) 56 57 60 64 52
胃瘻交換術 24 22 26 44 39
内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP) 218 212 317 348 323
小腸内視鏡下ERCP(DB-ERCP) 3 4 5 6 14
内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST) 113 82 118 171 172
内視鏡的胆管結石除去術 85 93 104 154 125
内視鏡的胆管ドレナージ術(ERBD、ENBD、ENGBD) 98 87 175 140 102
内視鏡的胆管ステント留置術 10 16 14 19 30
内視鏡的膵管ステント留置術 5 3 8 15 10
胆道鏡検査(POCS) 0 0 1 0 4
膵管鏡検査(POPS) 0 0 0 0 0
超音波内視鏡検査(EUS) 49 76 83 272 320
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA) 18 16 23 59 81
超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術関連 1 6 3 2 10
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術関連 5 3 3 7 12
経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTCD) 10 5 12 2 8
経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTGBD)、穿刺吸引術(PTGBA) 13 9 8 10 3
経皮経肝膿瘍ドレナージ術(PTAD) 0 0 0 0 7
カプセル内視鏡検査 1 8 4 1 3
小腸ダブルバルーン内視鏡検査 11 3 4 2 6
内視鏡的イレウス管留置術 11 8 13 17 27
上部 9 7 12 13 25
下部 2 1 1 4 2
超音波下肝生検(肝腫瘍生検含む) 8 32 19 14 13
ラジオ波焼灼療法(RFA) 1 9 2 0 1
肝動脈塞栓術(TACE) 0 0 0 0 0

がん登録件数