腎臓がん(腎細胞がん)について
腎臓がんは腎臓の細胞ががん化したもので「腎がん」とも呼ばれ、また腎細胞から発生するため「腎細胞がん」とも呼ばれます。同じ腎臓から発生したがんでも腎盂から発生した「腎盂がん」とは性質や治療法が大きく異なるため区別されます。
腎臓がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、健康診断や他の病気の検査中に偶然発見されることがほとんどです。がんが大きくなると血尿・腰の痛み・腹部のしこり・圧迫感などが出てきます。さらに進むと肺・骨・肝臓・副腎・脳などに転移し、その臓器によって咳・血痰・骨の痛み・頭痛麻痺・発熱倦怠感・体重減少などの様々な症状が出てきます。
担当する医師
検査について
1. 血液検査
腎臓がんでは現在のところ診断や治療効果の判定に使用出来るような特定の腫瘍マーカーはありません。
2. 画像検査
エコー検査
体表面から機械を当ててがんの位置・大きさ・周囲臓器との関係などを検査します。
CT検査
造影剤を血管に注射して内臓や血管を染め、その染まり具合でがんの状態を確認する検査です。また転移の有無を確認するために全身を撮影する場合もあります。
MRI検査
腎機能が悪い或いはアレルギーにて造影剤が使えない場合やCTで判定が難しい場合などに施行します。
3. 組織検査:針生検
画像検査にてがんか否か判定出来ない場合、体表面から針を腫瘍に刺して細い組織を採取し病理組織学的検査にて判定することがあります。
手術について
他の臓器に転移していなくて根治が期待出来る場合、転移があっても体内にある腫瘍の体積を減らしてその後の治療効果を高める効果が期待出来る場合に手術で切除をします。これまでは片方の腎臓をまるごと摘除する腎摘除術が一般的でしたが、診断技術の向上などによってがんが小さい段階で見つかることも多くなり腎部分切除をおこなうことも増えてきました。がんの大きさや位置などによって「開腹」「腹腔鏡」「ロボット支援手術」などの方法を選択します。
薬物療法について
手術で根治がむずかしい場合に薬物療法をおこないます。腎臓がんの薬物療法では分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬を使用します。いわゆる抗癌剤は腎臓がんには効果がないといわれていますので使用することはありません。
当科で使用している薬剤
1. 分子標的薬
がん細胞の増殖にかかわるタンパク質や栄養を運ぶ血管などを標的にしてがんを攻撃する薬剤です。
ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、エベロリムス、テムシロリムス、カボザンチニブなど。
2. 免疫チェックポイント阻害薬
免疫細胞ががんを攻撃するちからを強くする薬剤です。
ニボルマブ、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブなど。
がんの組織型や状態によってこれらの薬剤を選択し単独で、あるいは2剤を組み合わせて使用します。
放射線治療について
患部に体外から放射線をあててがん細胞を死滅させる治療です。脳や骨に転移があり麻痺や疼痛がおこったときに症状を抑えるために行います。近年では5㎝以下の腎臓がんの進行を遅らせる目的で原発巣に照射する定位体幹部放射線照射(SBRT)を行うこともあります。
診療実績
腎臓がん手術症例数 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
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ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術 | 6 | 7 | 10 | 12 | 8 | 13 |
ロボット支援腹腔鏡下腎切除術 | - | - | - | - | - | 3 |
腹腔鏡下腎摘除術 | 2 | 8 | 6 | 8 | 9 | 7 |