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胃がん

胃がんについて

胃は、食道から流れてきた食物を貯留し、胃酸を含む胃内分泌液と食物とを混和し、混ざり合った内容物を十二指腸腸に送り出す役割を持つ消化管です。
胃がんは、胃の内側を覆う粘膜から発生し、少しずつ胃の壁深くへと進展します。一般的な胃がんは進行すると腫瘤と呼ばれる塊を形成しますが、一部の胃がんの中には塊を形成せず胃壁や胃の組織にしみこんでいくように進行するタイプがあります。このようなタイプの胃がんは早期発見が困難なこともあります。
胃がんの原因としてピロリ菌感染や、喫煙、塩分の多い食事などが大きく影響することが明らかになっています。特にピロリ菌の除菌治療は、胃がん予防に効果的とされ、早期発見と治療の重要性が高まっています。
早期胃がんでは自覚症状が少なく、定期的な検査が重要です。進行した胃がんでは、食欲不振、体重減少、腹部の痛みや違和感、吐血、黒色便といった症状が現れることが一般的です。特に、黒色便や吐血は胃がんの典型的な症状です。
胃がんの早期発見には、胃内視鏡検査(内視鏡カメラを使用して胃内部を観察する検査)が非常に有効で、リスクのある方には定期的な検査が推奨されます。



担当する医師

検査について

1.血液検査:腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)

胃がんでは、腫瘍マーカーが高くなることがあり、特に進行したがんでその傾向が強いです。特にCEAやCA19-9は、胃がんの指標としてよく使用されますが、早期がんでは必ずしも上昇するわけではないため、これだけで診断はできません。異常が見られた場合には、追加の精密検査が必要です。



2.画像検査:CT/MRI/PET

CTやMRIは、胃がんの広がりや転移の有無を調べるために使用されます。周囲のリンパ節や、肝臓、肺などへの転移を確認するために役立ちます。他のがんの診断においては有用と考えられているPET-CT検査は胃がんの診断には有用性に乏しいためあまりなされません。



3.組織検査:胃内視鏡検査(組織生検)

胃内視鏡検査で疑わしい病変を直接観察し、生検(組織の一部を採取)を行います。
これにより、病変が良性か悪性か、また進行度を評価し、確定診断を下します。検査結果に基づいた進行度(ステージ)によって治療方針が決定されます。

手術について

1.内視鏡治療(内視鏡的切除)

内視鏡を用いた胃がんの切除は、がんが粘膜層にとどまっている早期のケースに適用され、リンパ節転移のリスクが低いとされる場合に行われます。この方法は手術に比べて身体への負担が少なく、切除後も胃が残るため食生活への影響も軽減されることが特徴です。
また、内視鏡治療でがんが完全に取り除かれたかどうかは病理診断によって確認されます。もしがんが完全に除去され、リンパ節転移のリスクが非常に低い場合(根治度A、B)は経過観察が選ばれますが、完全に取り除けなかった場合や、転移の可能性がごく低い場合(根治度C1)には再治療や観察が行われます。逆に、内視鏡治療でがんが取り切れなかったり、転移のリスクがある場合(根治度C2)には、追加の手術が必要となることがあります。






1.内視鏡治療の方法

内視鏡の先端から、スネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーをかけて、病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)(図1)、高周波ナイフで粘膜下層から病変をはぎ取るように切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります(図2)。
EMRはがんの大きさが2cm以下で潰瘍のない病変が実施の条件ですが、ESDは2cmを超える潰瘍のない病変や、3cm以下の潰瘍のある病変でも行われます。



図1)内視鏡的粘膜切除術(EMR)



図2)内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)




2.内視鏡治療の合併症

治療後に、出血や胃に穴が開く穿孔(せんこう)が起こることがあります。出血や穿孔が起こると、吐き気や嘔吐などの症状が出てきます。その他にも、腹痛やめまいなど、治療後に何らかの体調の変化を感じたときには、医師や看護師に伝えることが必要です。



2.外科手術

早期胃がんの一部や進行胃がんは外科手術の適応となります。胃がんの手術は、がんの部分を含む近傍の胃とその周囲のリンパ節を切除する「胃切除術」が基本です。がんの位置や進行度に応じて、幽門側胃切除術、噴門側胃切除術や胃全摘術が行われ、残った胃や腸をつなぐ再建術が必要です。
以前は開腹手術が基本的な手術方法でしたが、近年では腹腔鏡手術さらにはロボット支援下手術などの傷の小さい低侵襲手術が行われています。これらの低侵襲手術は傷が小さいため患者さんの体の負担を軽減し、回復を早める効果があると考えられています。さらに、術中に視野が拡大できることや、ロボット支援下では精密な操作が可能になることが、がんの根治性を向上させつつ、手術に伴う合併症のリスクも軽減されると考えられています。
一般的に遠隔転移を伴うステージⅣの胃がんに対しては根治的手術ではなく化学療法が第一に推奨されます。一方、近年の抗がん剤の進歩により、化学療法を行うことで遠隔転移が消失し、がんを残さず切除することが可能となる方も多く見られるようになってきました。当院でもステージⅣ胃がんに対し、化学療法が良く効いた方に関しては積極的に根治切除を行っております。

薬物療法について

手術後の補助治療

手術後に再発リスクを減らすため、補助化学療法が行われます。特に、進行がんや再発リスクの高い患者に対して使用され、治療後の生存率向上に寄与しています。



転移・再発に対する治療

再発や遠隔転移が見られる場合、がんの進行を抑え、症状を緩和して生活の質を維持・向上させることを目的に全身化学療法や免疫療法が用いられます。特に、近年、免疫療法としてのPD-1阻害薬や分子標的薬は、進行がんに対して高い効果を示しており治療効果が向上しています。

放射線治療について

胃がんにおいて、放射線治療は他のがんに比べあまり用いられません。胃がんが進行し、切除や他の治療が困難な場合、痛みや出血などの症状を緩和し患者さんの生活の質の向上のために行われることがあります。

胃がん治療後の定期検査

胃がんの手術後は、定期検査が重要です。術後の再発リスクを早期に発見し、治療するためには、3〜6か月に1回の頻度で外来受診が推奨されます。特に、CT検査や血液検査が行われ、5年間のフォローアップが一般的です。

胃がんの再発とその治療

胃がんの再発としては、肝転移、肺転移、腹膜播種などが代表的です。再発が確認された場合、一般的に再手術は推奨されませんが、病状によっては外科的切除が考慮されることもあります。
外科的切除が難しい場合には化学療法が行われ、経過によっては、がんの縮小後に手術が考慮されることもあります。胃がんの再発に対しては、集学的治療(手術、化学療法)を行うことで、がんの進行を抑えることで症状を緩和して生活の質を維持・向上を目指すことが重要です。

診療実績

内科領域診療実績

2020 2021 2022 2023 2024
上部内視鏡検査 6,607 7,084 7,027 7,283 8,088
下部内視鏡検査 2,701 2,604 2,578 2,892 3,056
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、粘膜切除術(EMR) 828 883 915 1,062 1,202
ポリペクトミー(上部・下部) 382 624 727 861 941
EMR(上部) 0 3 1 7 6
EMR(下部) 446 256 187 194 255
内視鏡的消化管早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術(ESD) 93 111 115 120 120
食道 8 15 13 7 9
38 43 46 53 63
十二指腸 1 1 2 5 2
大腸 46 52 54 55 46
経口内視鏡的筋層切開術(POEM) 0 0 3 0 0
腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS) 4 4 1 0 0
内視鏡的消化管止血術 106 173 215 164 195
上部 74 119 147 82 128
下部 32 54 68 82 67
内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL) 24 27 27 16 24
内視鏡的食道・胃静脈瘤硬化療法(EIS) 6 6 1 2 0
内視鏡的消化管バルーン拡張術(EBD) 41 48 33 38 33
内視鏡的消化管異物除去術 20 29 25 28 34
内視鏡的消化管ステント留置術 26 22 24 50 40
食道 5 4 0 5 3
胃・十二指腸 2 5 4 11 12
大腸 19 13 20 34 25
胃瘻関連処置 80 79 86 108 91
経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG造設) 56 57 60 64 52
胃瘻交換術 24 22 26 44 39
内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP) 218 212 317 348 323
小腸内視鏡下ERCP(DB-ERCP) 3 4 5 6 14
内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST) 113 82 118 171 172
内視鏡的胆管結石除去術 85 93 104 154 125
内視鏡的胆管ドレナージ術(ERBD、ENBD、ENGBD) 98 87 175 140 102
内視鏡的胆管ステント留置術 10 16 14 19 30
内視鏡的膵管ステント留置術 5 3 8 15 10
胆道鏡検査(POCS) 0 0 1 0 4
膵管鏡検査(POPS) 0 0 0 0 0
超音波内視鏡検査(EUS) 49 76 83 272 320
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA) 18 16 23 59 81
超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術関連 1 6 3 2 10
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術関連 5 3 3 7 12
経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTCD) 10 5 12 2 8
経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTGBD)、穿刺吸引術(PTGBA) 13 9 8 10 3
経皮経肝膿瘍ドレナージ術(PTAD) 0 0 0 0 7
カプセル内視鏡検査 1 8 4 1 3
小腸ダブルバルーン内視鏡検査 11 3 4 2 6
内視鏡的イレウス管留置術 11 8 13 17 27
上部 9 7 12 13 25
下部 2 1 1 4 2
超音波下肝生検(肝腫瘍生検含む) 8 32 19 14 13
ラジオ波焼灼療法(RFA) 1 9 2 0 1
肝動脈塞栓術(TACE) 0 0 0 0 0



外科領域診療実績

手術症例数 2021年 2022年 2023年
全手術総数 1,101 1,167 1,033
鏡視下手術 516 587 545
全身麻酔手術 974 1,061 941
緊急手術 237 280 228

胃がん 2021年 2022年 2023年
悪性全症例 40 27 21
開腹 22 15 6
低侵襲手術 鏡視下 18 12 12
内視鏡支援手術ロボット - - 3

がん登録件数