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膵臓がん

膵臓がんについて

膵臓は胃の後ろ側にある、左右に細長い臓器です。右側を膵頭部といい、十二指腸に囲まれています。左側を膵尾部といい、脾臓に接しています。膵臓の真ん中の部分は膵体部といいます。
膵臓の働きには、食べ物の中のタンパク質を溶かす「膵液」という消化液を作って分泌する「外分泌機能」と、血糖や消化液の量を調節するホルモン(インスリンなど)を作って血液に出す「内分泌機能」があります。膵がんは膵液の通り道である膵管から発生し、膵臓にできる腫瘍の大多数を占めています。膵がんは早期に症状を呈しないために発見が遅れることが多く、他のがんと比べて治療成績が悪いとされています。
わが国の膵がんは増加傾向にあり、全国統計では、男性で肺がん、大腸がん、胃がんについで死因の第4位、女性では大腸がん、肺がんについで死因の第3位となっています。膵がんの発症には、喫煙、膵がんの家族歴、糖尿病、慢性膵炎などとの関連が言われています。
手術のみならず、手術前の正確な診断や術後の定期通院も含め、専門的な知識が必要であり、専門病院での診察・精密検査・治療が勧められています。



担当する医師

検査について

膵臓がんは早期発見が難しく、来院時には黄疸や転移をきたしている患者さんも多くおられます。
膵臓がんの早期診断には超音波内視鏡(EUS)検査が有用で、先端にエコー装置を備えた内視鏡を用いて、胃や十二指腸から膵臓の観察を行います。必要により先端から針を出して組織や細胞の検査を行います。特に膵臓がんの家族歴のある方、糖尿病、慢性膵炎、膵嚢胞(みずの袋)のある方には、積極的にお勧めしています。
もう一つの内視鏡検査は内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)検査で、十二指腸乳頭部から膵液の流れ道の造影を行う検査です。その際に膵液の細胞の検査を行ったり、膵がんにより胆管が狭窄している方には、胆管内にステントを留置して黄疸の治療を行います。



1.血液検査:腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)

膵がんで高くなることがある腫瘍マーカーです。がんが進行すると異常値を示すことが多くなります。定期的な測定で、がんの勢いを推測することが可能となるために、治療効果を推測することが可能となります。



2.画像検査:CT/MRI/PET

CTやMRIで膵がんの発生部位を特定します。特にCTで、病気の広がりを詳細に調べます。また頻度の高い肝臓への転移の有無を調べるために、肝臓MRI検査を行います。さらにPETによる全身検索で遠隔転移の状況を評価する場合もあります。



3.組織検査

膵臓は胃の後ろ側に存在するために、内視鏡の先端に超音波機器が搭載された特殊な内視鏡を用いて検査します。内視鏡を胃に挿入し、裏側に存在する膵臓を観察し、がんの一部組織を採取します。病理検査で組織内にがん細胞があるかを検査して診断します。

手術について

膵がんに対する手術は、他の臓器に転移がなく、膵臓の近くの大事な血管に広がっていない場合に行われます。近年は、手術前のがんの広がり具合から、「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」に分類し、それぞれの状態に合わせて手術前に抗がん剤治療を行います。抗がん剤治療後に、以下の種類の手術を行います。



1.膵頭十二指腸切除術

膵頭部に発生したがんに対して行われる術式です。膵頭部・十二指腸・胆嚢・肝外胆管を一緒に切除します。また膵がんが転移しやすい周囲のリンパ節に対して、周囲のリンパ節を郭清します。切除後には、食べ物や消化液の通り道を確保するために、消化管での再建術を併施します。



2.膵体尾部切除術

膵体部や膵尾部に発生したがんに対して行われる術式です。膵体尾部とともに脾臓も一緒に切除します。また膵がんが転移しやすい周囲のリンパ節に対して、周囲のリンパ節を郭清します。



3.膵全摘術

膵臓全体にがんが広がっている場合に、膵臓全体を摘出することがあります。膵全摘後は、膵の働きである内分泌機能と外分泌機能が失われるために、糖尿病や脂肪肝になってしまいます。インスリンや消化酵素剤の補充が必要になります。

放射線治療について

放射線治療は根治的治療や、術前治療として用いられます。また症状緩和のためにも広く用いられています。



薬物療法について

外科的切除が難しい膵臓がんに対する抗がん剤治療は、がんを完治させるほどの効果は残念ながらまだありませんが、治療後の生存期間は年々長くなっており、やがては長期間にわたってがんの進行を抑えることが可能になることが期待されます。また、抗がん剤治療が著効した場合に、その時点で外科的切除が考慮される場合はあります。

膵臓がん治療後の定期検査

膵臓がんの手術を受けたあとは定期検査のための外来通院が必要になります。肉眼的にがんの取り残しがない根治的な手術であっても、術後経過中に再発が起こる場合があり、再発を早期に発見できれば再発に対する治療を早期に開始できると考えています。手術後の状態によって、補助療法(内服の抗がん剤治療)を6か月間行うことがあります。
通常、血液検査に加えてCTやMRI検査を定期的に行います。外来通院の頻度は、3か月から6か月に一回程度の受診が一般的です。手術後5年間は外来通院していただくことが望ましいです。

診療実績

内科領域診療実績

2020 2021 2022 2023 2024
上部内視鏡検査 6,607 7,084 7,027 7,283 8,088
下部内視鏡検査 2,701 2,604 2,578 2,892 3,056
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、粘膜切除術(EMR) 828 883 915 1,062 1,202
ポリペクトミー(上部・下部) 382 624 727 861 941
EMR(上部) 0 3 1 7 6
EMR(下部) 446 256 187 194 255
内視鏡的消化管早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術(ESD) 93 111 115 120 120
食道 8 15 13 7 9
38 43 46 53 63
十二指腸 1 1 2 5 2
大腸 46 52 54 55 46
経口内視鏡的筋層切開術(POEM) 0 0 3 0 0
腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS) 4 4 1 0 0
内視鏡的消化管止血術 106 173 215 164 195
上部 74 119 147 82 128
下部 32 54 68 82 67
内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL) 24 27 27 16 24
内視鏡的食道・胃静脈瘤硬化療法(EIS) 6 6 1 2 0
内視鏡的消化管バルーン拡張術(EBD) 41 48 33 38 33
内視鏡的消化管異物除去術 20 29 25 28 34
内視鏡的消化管ステント留置術 26 22 24 50 40
食道 5 4 0 5 3
胃・十二指腸 2 5 4 11 12
大腸 19 13 20 34 25
胃瘻関連処置 80 79 86 108 91
経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG造設) 56 57 60 64 52
胃瘻交換術 24 22 26 44 39
内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP) 218 212 317 348 323
小腸内視鏡下ERCP(DB-ERCP) 3 4 5 6 14
内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST) 113 82 118 171 172
内視鏡的胆管結石除去術 85 93 104 154 125
内視鏡的胆管ドレナージ術(ERBD、ENBD、ENGBD) 98 87 175 140 102
内視鏡的胆管ステント留置術 10 16 14 19 30
内視鏡的膵管ステント留置術 5 3 8 15 10
胆道鏡検査(POCS) 0 0 1 0 4
膵管鏡検査(POPS) 0 0 0 0 0
超音波内視鏡検査(EUS) 49 76 83 272 320
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA) 18 16 23 59 81
超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術関連 1 6 3 2 10
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術関連 5 3 3 7 12
経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTCD) 10 5 12 2 8
経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTGBD)、穿刺吸引術(PTGBA) 13 9 8 10 3
経皮経肝膿瘍ドレナージ術(PTAD) 0 0 0 0 7
カプセル内視鏡検査 1 8 4 1 3
小腸ダブルバルーン内視鏡検査 11 3 4 2 6
内視鏡的イレウス管留置術 11 8 13 17 27
上部 9 7 12 13 25
下部 2 1 1 4 2
超音波下肝生検(肝腫瘍生検含む) 8 32 19 14 13
ラジオ波焼灼療法(RFA) 1 9 2 0 1
肝動脈塞栓術(TACE) 0 0 0 0 0




外科領域診療実績

手術症例数 2021年 2022年 2023年
全手術総数 1,101 1,167 1,033
鏡視下手術 516 587 545
全身麻酔手術 974 1,061 941
緊急手術 237 280 228

肝胆膵手術症例数 2021年 2022年 2023年 2024年
全手術総数 43 37 54 78
開腹 33 25 36 52
低侵襲手術 鏡視下 10 12 12 19
内視鏡支援手術ロボット - - 6 7

※胆嚢摘出術、腹腔鏡下胆嚢摘出術は除く

がん登録件数