ブレストセンターについて
日本における乳癌の罹患数及び死亡数はいまだ増加傾向にあり、日本人女性では罹患率の最も高い癌となっております。罹患数は多くとも乳癌による死亡率が低下傾向に転じている欧米諸国と比較しますと、日本は検診率の低さが目立ち、現状の要因の一つと考えられます。地域の先生方におかれましては、是非患者様に乳癌検診を推奨頂き、二次検診を要する方はご紹介下さい。また、乳房のしこりや変形,乳房皮膚の色調変化や乳頭分泌,乳頭乳輪部の皮膚の変化など自覚症状を認める患者様は乳腺外科受診をご指示下さい。
この4月より当科は常勤医3名(内乳腺専門医2名)となり、診断から治療および術後フォローまで他科及び多職種と協力して診療を行います。精査や乳癌診療及びフォローに必要なマンモグラフィー検査や乳腺超音波検査,乳房MRI検査はもちろん、乳房PET,CT検査,RI検査やPET-CT検査,骨密度検査などが揃っております。また、診断および治療には組織検査による精査が重要となりますが、針生検,吸引式組織生検,ステレオガイド下マンモトーム生検検査が可能であり、病態に応じて生検方法を選択します。
乳癌はタイプと病期により、その治療方針が異なります。当科では科学的根拠に基づいて推奨される治療を基本に、患者様の価値観やご希望,社会的背景などを含めて治療方針を検討致します。早期乳癌の場合は手術、薬物療法、放射線治療などを駆使した集学的治療で根治を目指し、根治が難しい手術不能あるいは転移再発乳癌については、病状と患者様の希望に基づく診療をともに検討する方針です。
手術については根治性と整容性を考慮し、再建をご希望の場合は形成外科と連携して術式を検討致します。また、放射線治療は局所療法・緩和目的となることが多いですが、予後にも関わる重要な治療の一つです。薬物療法はホルモン剤,抗癌剤,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など様々な副作用を伴う薬剤を用います。患者様が安全に安心して治療を受けられるよう、他科との連携はもちろん、かかりつけ医である先生方と診療情報を共有させて頂くことが重要と考えております。
多くの場合、乳癌治療は長期戦となります。患者様が癌を抱えながらも自分らしく、少しでも前を向いて生活して頂けるよう診療に努めて参りますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
マンモPET
乳腺専用PE T 装置です。他の装 置やマンモグラフィー検査のように乳房を圧迫(挟む)することなく検査が行えます。検査台にうつ伏せで寝ていただき、検出器ホール(筒)に片側の乳房を入れて女性技師が検査をします。
マンモグラフィー
フルデジタル・マンモグラフィシステムです。スクリーニングからステレオバイオプシー、トモシンセシスを使用した画像診断から精密検査まで幅広く対応できます。
ICG蛍光観察装置「MIPS」
プロジェクションマッピングの技術を応用し、患者の体表や臓器にリアルタイムで直接手術ガイド情報を投影できる新システムを採用しております。
診療科の特色
乳腺外科は主に、日本人女性で最も罹患率の高い癌である乳癌の診断および治療を行っております。
一言で乳癌といっても、そのタイプや病期により患者さんお一人お一人に適した治療は異なります。エビデンスに基づいた最適な治療を検討し実行するためには、精度の高い診断システムと、手術,薬物療法,放射線治療といった様々な治療を駆使した集学的治療が可能であることが必要です。また、免疫チェックポイント阻害剤など新しい薬剤の発展が目覚ましい反面、様々な副作用の対策が必要であり他科及び多職種との連携が重要です。当院ではブレストセンターを立ち上げ、乳房の診療を必要とする患者様が、専門クリニックのような居心地での診療と、総合病院としての強みである安全な環境下での集学的治療を受けられるよう体制を整えてきております。
診療内容・方針
当院ではトモシンセシス付きマンモグラフィー検査、乳腺超音波検査、乳房MRI、乳房PETといった診断および治療効果の評価などに用いる画像検査、確定診断に必要な針生検、及び吸引式組織生検(エコーガイド下及びステレオガイド下)が可能です。
乳癌の診断に至った場合は、乳癌のサブタイプ及び病期を精査し、エビデンスに基づき最適と判断される治療を検討します。治療方針を決定する際は、患者さんご自身の治療に対する希望や価値観を含めてご本人にとって最適な治療を相談します。早期乳癌の場合は根治率が高い治療、手術不能あるいは転移再発乳癌の場合は生命予後の延長や症状緩和が最も期待できる治療を検討し提案しますが、その治療が必ずしも患者さんのご希望と一致するとは限りません。
治療の目的やメリット・デメリットを十分に説明してご理解頂くこと、ご本人の意思や価値観を尊重し一緒に治療方針を検討することで、納得して治療を受けて頂き、少しでも前向きに自分らしく生活して頂けるよう寄り添いたいと考えております。
取り扱う主な疾患
乳腺疾患全般ですが主に「乳癌」の診断と治療を行っています。
- 乳腺悪性腫瘍︓乳癌、葉状腫瘍(悪性・境界領域)
- 乳腺良性腫瘍︓乳管内乳頭腫、線維腺腫、葉状腫瘍(良性)
- 非腫瘍性疾患︓乳腺症、乳腺炎、乳輪下膿瘍
地域医療連携
乳房のしこりや変形,乳頭分泌や乳頭陥凹,皮膚の引き連れや色調変化など乳房の異常所見を認める患者さんはご紹介下さい。また、乳癌が疼痛や違和感の原因となることは少ないですが、検診歴のない患者さんがこれらの自覚症状で乳房精査を受け、偶発的に乳癌が見つかることがあります。乳房に気になる症状を認める方はご紹介頂けましたら幸いです。
診療実績
指標 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|
乳癌 | 41 | 54 | 60 | |
乳房切除術 | 3 | 24 | 41 | |
乳房部分切除術 | 38 | 30 | 19 |
医師紹介
氏名 | 役職 | 専門医・認定医・その他講習修了 |
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光藤 悠子 | 部長 ブレストセンター長 | 日本外科学会 外科認定医・専門医 日本乳癌学会 乳腺専門医 検診マンモグラフィ読影 認定医(A判定) 厚生労働省 臨床研修指導医 日本臨床栄養代謝学会 認定医 緩和ケア研修会 修了 |
藤野 麻琴 | 医員 | 日本外科学会 外科専門医 検診マンモグラフィ読影 認定医 乳がん検診 超音波検査実施・判定医 緩和ケア研修会 修了 |
河口 浩介 | 非常勤 | 三重大学乳腺外科 教授 医学博士 日本外科学会 外科専門医 日本乳癌学会 乳腺専門医 検診マンモグラフィ読影 認定医(A判定医) |
川西 佳奈 | 非常勤 | |
川口 駿 | 非常勤 | |
前島 佑里奈 | 非常勤 | 日本外科学会専門医 日本乳癌学会専門医 日本癌治療認定医機構がん治療認定医 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 検診マンモグラフィ読影認定医(A判定医) |