診療科の特色
1974年の病院開設と同時に小児科診療を開始いたしました。以来40年以上にわたって地域の子どもたちのため24時間体制で診療にあたっています。
救急受け入れ件数が京都下府有数である特性から、急性期疾患を中心としてあらゆる疾患の1~3次までの診療を行い、年間約30,000人の外来患者、約800人の小児救急車来院患者、約1,000の入院患者の治療を行っております。また、2000年よりNICUを開設し、現在は9床の認可を得て入院治療を行い、地域周産期母子医療センターの一角も担っています。
診療体制はスタッフ全員でのチーム医療を行ない、連日のカンファレンスで患者様の病態管理や治療方針を検討しています。さらには、各専門領域の専門医を有しており、最先端の医療情報をもとにきめ細かい医療を心がけています。特に、新生児・神経・アレルギー・循環器・代謝内分泌・血液などの分野においては熟練した専門医による専門外来を設置して高度なニーズに対応しています。
小児科内分泌代謝外来
低身長や新生児マススクリーニング対象疾患の治療を中心に、下記のような疾患について、日本小児内分泌学会・日本先天代謝異常学会の最新ガイドラインを踏まえた診療を行っています。
- 先天性あるいは自己免疫性の甲状腺疾患
- 思春期早発症や思春期遅発に伴う低身長症
- 成長ホルモン治療が可能な骨系統疾患、低身長症候群
- フェニルケトン尿症、シトリン欠損症などのアミノ酸代謝異常症
- メチルマロン酸血症などの有機酸代謝異常症
- 極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症などの脂肪酸酸化異常症
NICU
当院は京都市以南の新生児医療の拠点として、9床のNICUを運用しています。年間入院件数は約150例、そのうち約半数は新生児搬送というのが特徴です。対象は近隣の産婦人科で生まれた新生児で、顔色不良・呼吸障害・心雑音など、医療が必要な赤ちゃんを当院の救急車でお迎えに行きます。これまで、京都府下で1、2を争う搬送件数です。今後も地域の安全な新生児医療の為に尽力して参ります。
施設認定
小児科専門医連携施設(京都大学)
カンファレンス
宇治徳洲会病院小児科ネットワークの会
診療内容・方針
少子高齢化や人口減少に伴い子供さん一人一人に対する医療ニーズも、より高度化することが予想されます。また子育て経験の少なさ等からくる親御さんの不安も、さらに大きくなるでしょう。このような時代にあって小児科に求められるものは、ただ疾患に対する治療だけではなく、患者さんご本人やご家族の不安に対して、適切な助言を与え安心して子育てできるよう助けとなることであると考えます。当科では現在行っているICU治療を含む1~3次の救急医療に加え、新生児・神経・アレルギー・循環器等の専門外来で高度なニーズに応えつつ、予防接種や乳児健診·一般外来で、病気の予防や子育ての不安を解消できる助けとなるよう努力してまいります。
小児科の病気:てんかんについて
※徳洲会グループホームページより引用
てんかんとは
大脳の細胞が自分の思いとは無関係に過剰に興奮し、意識障害やけいれんなどいろいろな症状(『発作』とよばれます)が繰り返して起こる病気です。大きく分けて原因不明で起こる『特発性』と、いろいろな大脳の病気に伴ったり、その病気の後遺症として起こる『症候性』があります。新生児仮死、髄膜炎、脳炎、脳出血、脳外傷などの回復後に起こったり、先天的な脳形成異常に伴ったり、遺伝子の異常で起こったりする場合は後者に含まれます。
発症年齢で多いのは
小児期早期に多く発症し、その後次第に少なくなりますが、最近は高齢者の発症が増えており注目されています。罹患率はおよそ100人に1人で、日本では100万人余りの患者さんおられます。
症状は「部分発作」「全般発作」に大別
大脳図:発作の起こる部位により症状は違います
症状は『発作』と呼ばれ、繰り返し起こるのが特徴で、「部分発作」と「全般発作」に分けられます。
「部分発作」とは大脳の局所の神経細胞が過剰に興奮するために発症し、手足の一部が硬くなったり、ぴくついたり、眼前がちかちかしたり、変なものが見えたり、異常なにおいがしたり、むかつきや、腹痛、頭痛などが起こることです。通常、意識ははっきりしていますが、これらの症状に続いて意識がなくなると「複雑部分発作」と呼ばれます。また、部分発作から次第に全身のけいれんになる「二次性全般化発作』を起こす場合もあります。
「全般発作」とは、発作の初めから意識がなくなったり、いきなり全身がピクッとしたり、全身のけいれんが起こる場合です。これらの症状は、入眠時、覚醒直後、あるいは睡眠中や入浴中など、時と場所に関係なく起こり、発熱時や睡眠不足、体調の悪い時など、いろいろなコンディションでも起こることがあります。
また、新生児の症状では、手足の不自然な動きであったり、単に無呼吸であったりする場合があります。小児では、睡眠中に起こる不自然な行動など「発作」かどうかの判断が大変難しく、急に笑ったり、失神したり、変なことを話したりすると精神疾患との見極めで紛らわしいことがありますので注意が必要です。以上の発作型を整理すると、てんかんは下記のように分類されます。
原因 | てんかんの分類(1989年国際てんかん連盟分類より一部を掲載しました) | ||
特発性 | 全般てんかん | 局在関連てんかん | |
小児欠神てんかん 若年失神てんかん 若年ミオクロニてんかん | 中心・側頭部に刺波を持つてんかん 後頭部に突発波を持つてんかん |
||
症候性 | 全般てんかん | 局在関連てんかん | |
ウエスト症候群 レノックス症候群 | 側頭葉てんかん 前頭葉てんかん 頭頂葉てんかん 後頭葉てんかん |
全般てんかんは全般発作、局在関連てんかんは部分発作が中心に起こります。それぞれ原因不明の特発性と、種々の病気に伴ったり、回復後に起こる症候性があります。
診断では脳波検査が必須
このような症状をきたす疾患は、てんかん以外にもたくさんありますので、いろいろな検査が必要です。そのために脳CT、MR、血液検査や髄液検査などの検査を行いますが、なかでも脳波検査は必須です。脳波検査で異常波(発作波と呼ばれます)を記録できればてんかんの可能性が強くなりますが、必ず発作波が記録できるわけではありませんので、繰り返し検査をしたり、ビデオ撮影しながら脳波も同時に記録するなどの特別な検査が必要になることもあります。その他、神経の伝道速度を検査したり、発達検査や認知症の検査をしたりします。
抗てんかん薬での治療が中心
「抗てんかん剤」と呼ばれる薬を内服することが第一の治療です。現在20種ほどの薬が使用され、さらに開発中の薬もあります。先に症状のところで述べた発作型に応じて薬を選択して少量から少しずつ用量を増やしていきます。毎日1~3回に分けて規則的に内服します。最初の薬が効果ないときには他剤に変更するか、他剤を併用します。
発作のコントロールが難しい「難治性てんかん」では数種類の薬を併用することがあります。また赤ちゃんに発症する「点頭てんかん」(ウエスト症候群)では「ACTH」と呼ばれるホルモン剤を使ったり、「ケトン食」と呼ばれる脂肪の多い食事で治療することもあります。
内服治療でどうしても収まらないときには外科的治療も考慮されます。てんかんの原因病変が外科的に切除可能であれば局所的に切除をしたり、神経路を切断したりします。手術的治療は脳の他の機能が影響を受けることがありますので、専門医とよく相談のうえ、発作と社会生活のバランスを考慮して慎重な対応が必要です。またVNSと呼ばれる副交感神経を電気的に刺激する方法などがありますが、これも内服治療で収まらないときの選択枝で、てんかん専門医とよく相談して検討してください。
日本で承認されている抗てんかん剤
(てんかんガイドライン2010に最近承認されたものを追加)
一般名 | 一般名 |
---|---|
アセタゾラミド エトサクシミド ガバペンチン カルバマゼピン クロナゼパム クロバザム ジアゼパム 臭化カリウム スルチアム ゾニサミド | トビラマート ニトラゼパム バルプロ酸 フェニトイン フェノバルビタール プリミドン ラモトリギン レベチラセタム ペランパネル ラコサミド |
どのくらいの期間内服が必要か
効果があれば最短でも2~3年間の内服が必要です。この期間に発作がなく、また脳波で発作波もなければ、薬を少しずつ減らしながら中止することができます。減量に伴い発作症状が再発することもあり慎重に行います。発作が続くときは生涯、内服が必要になることもあります。
内服治療は定期的な外来通院で可能ですが、発作が頻回に起こったり、発作が収まらなくなる『重積状態』と呼ばれるときは、一時的に入院治療が必要になります。
治療の目標は発作を100%コントロールすることですが、種々の薬やその他の方法を駆使しても完全な抑制が困難なこともあります。
治療上の留意点
前に述べたように、発作は入浴中であったり、睡眠中に起こったり、外出中や旅行中に起こることがあります。大切なことは決められた薬をきちんと忘れずに内服することです。これが守れないとせっかく治療していても発作を招き、事故などにつながりかねません。例えば、“なが風呂”をしたり、睡眠不足や過労になったりすると起こりやすくなります。また高い所に上る、潜水をするなど発作が起こると事故につながる可能性がある状況は避けるようにしましょう。
また、どのような薬も副作用はあります。その人に適した一番副作用が少ない薬を選択します。眠気、ふらつき、食欲低下、発疹、肝障害、貧血など薬により副作用も違います。副作用が強ければ他剤への変更が必要です。
公的助成で治療費の負担は軽減
小児期は自治体によって違いがありますが、公的助成によって中学生までは無料あるいは軽度の自己負担で済みます。成人では自立支援の法律があり、手続きをすれば所得によりますが援助を受けられます。
地域医療連携
紹介・救急等は従来通り24時間体制で対応しています。
施設認定
- 小児科専門医連携施設(京都大学)
カンファレンス
- 宇治徳洲会病院小児科ネットワークの会
診療実績
指標 | 2023年 |
---|---|
救急搬入件数 | 1379 |
救急搬入後入院患者数 | 327 |
医師紹介
氏名 | 役職 | 専門医・認定医・その他講習修了 |
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篠塚 淳 | 部長 | 日本小児科学会 小児科専門医・指導医 ICDインフェクションコントロールドクター 厚生労働省 臨床研修指導医 |
奥村 謙一 | 部長 | 医学博士 日本小児科学会 小児科専門医・指導医 日本小児循環器学会 小児循環器専門医 日本超音波医学会 超音波専門医・指導医 日本小児循環器学会 評議員 日本小児心臓MRI研究会 評議員 近畿胎児心臓病研究会 評議員 厚生労働省 臨床研修指導医 |
長澤 真由美 | 副部長 | 日本小児科学会 小児科専門医 日本周産期・新生児医学会 周産期専門医(新生児) 日本胎児心臓病学会 胎児心エコー認定医 新生児蘇生法(NCPR)インストラクター 国際認定ラクテーションコンサルタント |
粟国 仁志 | 副部長 | 日本小児科学会 小児科専門医 厚生労働省 臨床研修指導医 |
新居 育世 | 医長 | 日本小児科学会 専門医・指導医 日本周産期・新生児医学会 専門医 緩和ケア研修会 修了 |
西角 元一 | 医長 | 日本小児科学会 小児科専門医 |
和田 卓三 | 医長 | 日本小児科学会 小児科専門医 新生児蘇生法「専門」コースインストラクター ICCS Bedwetting Expert Certification Program |
網本 裕子 | 医員 | 日本小児科学会 小児科専門医・指導医 日本専門医機構認定 小児科専門医 日本アレルギー学会 アレルギー専門医 |
関根 薫平 | 医員 | 日本小児科学会 小児科専門医 PALSプロバイダー 取得 |
糸井 健人 | 医員 | 緩和ケア研修会 修了 |
菅原 拓真 | 医員 | 小児科専門研修プログラム 専攻医 |
和泉 恭佑 | 医員 | 小児科専門研修プログラム 専攻医 |
重松 陽介 | 指導部長 | 医学博士 日本小児科学会 小児科専門医・指導医 日本マススクリーニング学会 理事 医用マススペクトル学会 医用質量分析認定士 |
丸山 立憲 | 総長 | 厚生労働省 臨床研修指導医 厚生労働省 面接指導実施医師 |